07. CLI 開発

この章では Crystal での CLI 開発について書きます。

Crystal で CLI ツール

Crystal で CLI ツールの開発をしていきましょう。Crystal で CLI ツールを書くメリットは次のようなものがあります。

  • コンパイルしてワンバイナリにできる

  • Ruby 風の syntax で雑に書ける

  • 実行速度が早い

  • コンパイル時に型チェックが入る

CLI ツールは、欲しい時にサッと書けて継続的に使えるようにしたいですね。そういう意味では、 Crystal という選択肢は良いのではないでしょうか。今回初めて Crystal を触るという方も、まずは CLI ツールをサクッと作ってみることをおすすめします。では、早速作っていきましょう。

自作の echo コマンド「 myecho 」を作る

echo コマンドを模倣した myecho コマンドを作っていきましょう。まずは crystal init app myecho を実行してひな形を作ります。

$ crystal init app myecho
      create  myecho/.gitignore
      create  myecho/.editorconfig
      create  myecho/LICENSE
      create  myecho/README.md
      create  myecho/.travis.yml
      create  myecho/shard.yml
      create  myecho/src/myecho.cr
      create  myecho/src/myecho/version.cr
      create  myecho/spec/spec_helper.cr
      create  myecho/spec/myecho_spec.cr
Initialized empty Git repository in /path/to/myecho/.git/

次のようなファイルが作成されました。

$ tree
.
├── LICENSE
├── README.md
├── shard.yml
├── spec
│   ├── myecho_spec.cr
│   └── spec_helper.cr
└── src
    ├── myecho
    │   └── version.cr
    └── myecho.cr

3 directories, 7 files

これで準備は整いました。まずはテストを回してみましょう。

$ crystal spec
F

Failures:

  1) MyEcho works
     Failure/Error: false.should eq(true)

       Expected: true
            got: false

     # spec/myecho_spec.cr:7

Finished in 73 microseconds
1 examples, 1 failures, 0 errors, 0 pending

Failed examples:

crystal spec spec/myecho_spec.cr:6 # MyEcho works

テストは落ちます。ひな形生成時、 spec/myecho_spec.cr に失敗するテストが書かれているからです。

spec/myecho_spec.cr
require "./spec_helper"
require "./../src/myecho.cr"

describe MyEcho do
  # TODO: Write tests

  it "works" do
    false.should eq(true)
  end
end

では、実際のテストから書いていきましょう。myecho の基本機能は「与えられた引数の文字列をそのまま出力する」です。

spec/myecho_spec.cr の一部
describe MyEcho do
  describe MyEcho::Cli do
    describe "run" do
      it "writes the content of args to specified IO" do
        io = IO::Memory.new           (1)
        myecho = MyEcho::Cli.new(io)  (2)
        myecho.run(["foo", "bar"])    (3)
        io.to_s.should eq "foo bar\n" (4)
      end
    end
  end
end
  1. 出力する先の IO インスタンスを生成します。テスト時は IO::Memory に出力します。

  2. MyEcho::Cliio を渡し、インスタンスを生成します。

  3. MyEcho::Cli#run に、コマンドライン引数の ARGV を模した ["foo", "bar"] を渡して実行します。

  4. io に出力された文字列を検証します。

まだ実装が終わっていないので、このテストは落ちます。実装側も書きましょう。

src/myecho.cr
require "./myecho/*"

module MyEcho
  class Cli
    def initialize(@io : IO = STDOUT) (1)
    end

    def run(args)                     (2)
      @io.print args.join(" ") + "\n" (3)
    end
  end
end
  1. インスタンス変数 @io を定義します。初期値は STDOUT です。

  2. #run を定義します。

  3. @io に引数 args を出力します。

書けたらテストを回しましょう。

$ crystal spec
.

Finished in 66 microseconds
1 examples, 0 failures, 0 errors, 0 pending

通りました。これで、受け取った引数をそのまま出力するメソッド #run を実装できました。次は build してバイナリを作りましょう。

まずは build 対象のファイルを作ります。src/myecho.cr#run を呼び出して直接 build してもよいですが、そうするとテスト時にも #run が実行されてしまいます。それを避けるために cli.cr ファイルを別途作成し、 myecho.cr を require しましょう。

src/cli.cr
require "./myecho"

MyEcho::Cli.new.run(ARGV)

これで、モジュールと build ファイルを分離できました。早速 build してみましょう。

$ mkdir bin
$ crystal build -o ./bin/myecho ./src/cli.cr

./bin/ ディレクトリを作成し、その中に myecho という名前でバイナリを出力しています。myecho を実行してみましょう。

$ ./bin/myecho Hello!! World!!
Hello!! World!!

出力されました!CLI ツールの完成です!いろいろ出力して遊んでみてください。

$ ./bin/myecho HAHAHA!
HAHAHA!

バージョン表示のオプション -v を実装する

さらに CLI ツールらしくしていきましょう。バージョンを表示させる -v オプションを実装します。オプションがあると一気に CLI ツールらしくなりますね。Crystal には OptionParser というクラスが用意されています。コマンドラインオプションを扱うのに便利なクラスです。今回は OptionParser の使い方も解説しつつ実装していきます。まずはテストから書きましょう。

spec/myecho_spec.cr の一部
describe "writes the version to specified IO" do
  it "with '-v'" do
    io = IO::Memory.new                      (1)
    myecho = MyEcho::Cli.new(io)             (2)
    myecho.run(["-v"])                       (3)
    io.to_s.should eq MyEcho::VERSION + "\n" (4)
  end
end
  1. 出力する先の IO インスタンスを生成します。テスト時は IO::Memory に出力します。

  2. MyEcho::Cliio を渡し、インスタンスを生成します。

  3. version を表示するコマンドライン引数 ["-v"] を渡して実行します。

  4. MyEcho::VERSION が表示されていることを検証します。

テストを回しましょう。

$ crystal spec

..F

Failures:

  1) MyEcho MyEcho::Cli run writes the version to specified IO with '-v'
     Failure/Error: io.to_s.should eq MyEcho::VERSION + "\n"

       Expected: "0.1.0\n"
            got: "-v\n"

     # spec/myecho_spec.cr:18

Finished in 117 microseconds
3 examples, 1 failures, 0 errors, 0 pending

Failed examples:

crystal spec spec/myecho_spec.cr:14 # MyEcho MyEcho::Cli run writes the version to specified IO with '-v'

0.1.0 が期待されていますが -v が出力されていますね。これは期待通りの落ち方です。では実装に入りましょう。単純に「 -v が入力されたら MyEcho::VERSION を出力する」でもよいのですが、先程も宣言した通り OptionParser を導入します。

src/myecho.cr
require "./myecho/*"
require "option_parser" (1)

module MyEcho
  class Cli
    def initialize(@io : IO = STDOUT)
    end

    class Options
      property display_version : Bool = false
      property args : Array(String) = [] of String
    end

    def run(args)
      # オプション設定を格納する
      options = Options.new

      # OptionParserを用いたオプションの設定
      OptionParser.parse(args) do |parser| (2)
        parser.on("-v", "show version") do (3)
          options.display_version = true
        end
        parser.unknown_args do |unknown_args| (4)
          options.args = unknown_args
        end
      end

      # バージョンの表示
      if options.display_version
        @io.print MyEcho::VERSION + "\n"
        return
      end

      # 引数の表示
      @io.print options.args.join(" ") + "\n"
    end
  end
end
  1. 標準ライブラリの OptionParser を require します。

  2. OptionParser#parseargs を渡し、ブロック内でオプションを定義していきます。

  3. OptionParser#on の引数に -v とその説明文を、ブロックには実行したい処理を書きます。

  4. オプション以外の引数は、配列になって OptionParser#unknown_args のブロック引数となります。

テストを回しましょう。

$ crystal spec
...

Finished in 102 microseconds
3 examples, 0 failures, 0 errors, 0 pending

通りました。バイナリも作りましょう。そして、実際にバージョンを表示してみましょう。

$ crystal build -o ./bin/myecho ./src/cli.cr
$ ./bin/myecho foo
foo
$ ./bin/myecho -v
0.1.0

バージョン表示ができました!CLI ツールらしくなってきました。ここまで来ると、 --version を指定してもバージョンを表示させたいですよね。現状だと例外が発生してしまいます。

$ ./bin/myecho --version
--version
Invalid option: --version (OptionParser::InvalidOption)

(スタックトレースが続く ... )

では対応していきましょう。まずはテストから書きます。

spec/myecho_spec.cr の一部
describe "writes the version to specified IO" do
  it "with '-v'" do
    io = IO::Memory.new
    myecho = MyEcho::Cli.new(io)
    myecho.run(["-v"])
    io.to_s.should eq MyEcho::VERSION + "\n"
  end

  # 新しいテストケース
  it "with '--version'" do
    io = IO::Memory.new
    myecho = MyEcho::Cli.new(io)
    myecho.run(["--version"]) (1)
    io.to_s.should eq MyEcho::VERSION + "\n"
  end
end
  1. --version を指定した場合でも、バージョンが表示されることを検証しています。

テストを回すと、例外が発生しテストが落ちます。

$ crystal spec
.....E

Failures:

  1) MyEcho MyEcho::Cli run writes the version to specified IO with '--version'

       Invalid option: --version
Error running at_exit handler: Index out of bounds

対応するには、 OptionParser#on の第二引数に long_flag を指定します。

src/myecho.cr の一部
parser.on("-v", "--version", "show version") do (1)
  options.display_version = true
end
  1. OptionParser#on の第二引数に --version を指定しています。

これでテストが通ります。

$ crystal spec
......

Finished in 189 microseconds
6 examples, 0 failures, 0 errors, 0 pending

実際にバージョンを表示してみましょう。

$ crystal build -o ./bin/myecho ./src/cli.cr
$ ./bin/myecho foo
foo
$ ./bin/myecho -v
0.1.0
$ ./bin/myecho --version
0.1.0

--version でもバージョンを表示することができました。このように、 OptionParser は、コマンドラインオプションを柔軟に扱えます。

ヘルプ表示のオプション -h --help を実装する

次にヘルプを表示してみます。オプションの追加はバージョン表示の時と同じです。まずはテストから書きましょう。

spec/myecho_spec.cr の一部
describe "writes the help to specified IO" do
  it "with '-h'" do
    io = IO::Memory.new
    myecho = MyEcho::Cli.new(io)
    myecho.run(["-h"])
    io.to_s.should eq "helpには何が表示される?"
  end
end

-h を指定した場合、何が表示されるかはまだわかりません。とりあえずこのまま進みましょう。現状だと、 Invalid option: -h でテストが落ちることは目に見えています。まずは適当に文字列を返しましょう。

src/myecho.cr の一部
    parser.on("-h", "--help", "show help") do
      options.display_help = true
    end

  ...

  # ヘルプの表示
  if options.display_help
    @io.print "helpです。" + "\n"
    return
  end

当然、テストは失敗します。

$ crystal spec
.........F

Failures:

  1) MyEcho MyEcho::Cli run writes the help to specified IO with '-h'
     Failure/Error: io.to_s.should eq "helpには何が表示される?"

       Expected: "helpには何が表示される?"
            got: "helpです。\n"

     # spec/myecho_spec.cr:35

Finished in 246 microseconds
10 examples, 1 failures, 0 errors, 0 pending

Failed examples:

crystal spec spec/myecho_spec.cr:31 # MyEcho MyEcho::Cli run writes the help to specified IO with '-h'

ここで、 OptionParser の便利機能を使います。OptionParser#to_s で、ヘルプメッセージを返してくれます。実装してみましょう。

src/myecho.cr の一部
# OptionParserを用いたオプションの設定
OptionParser.parse(args) do |parser|

  ...

  # ヘルプメッセージの格納
  # すべての設定を行った後で格納する
  options.help_message = parser.to_s + "\n"
end

...

# ヘルプの表示
if options.display_help
  @io.print options.help_message
  return
end

テストを回します。

$ crystal spec
...F

Failures:

  1) MyEcho MyEcho::Cli run writes the help to specified IO with '-h'
     Failure/Error: io.to_s.should eq "helpには何が表示される?"

       Expected: "helpには何が表示される?"
            got: "    -h, --help                       show help\n    -v, --version                    show version\n"

     # spec/myecho_spec.cr:35

Finished in 174 microseconds
4 examples, 1 failures, 0 errors, 0 pending

Failed examples:

crystal spec spec/myecho_spec.cr:31 # MyEcho MyEcho::Cli run writes the help to specified IO with '-h'

それらしい文字列が返ってきました。テストを修正しましょう。

spec/myecho_spec.cr の一部
describe "writes the help to specified IO" do
  it "with '-h'" do
    io = IO::Memory.new
    myecho = MyEcho::Cli.new(io)
    myecho.run(["-h"])
    io.to_s.should eq <<-HELP_MESSAGE
        -h, --help                       show help
        -v, --version                    show version

    HELP_MESSAGE
  end
end

今度はテストが回りました。

$ crystal spec
..........

Finished in 294 microseconds
10 examples, 0 failures, 0 errors, 0 pending

ヘルプが表示されるかを build して確かめます。

$ crystal build -o ./bin/myecho ./src/cli.cr
$ ./bin/myecho foo
foo
$ ./bin/myecho -h
    -h, --help                       show help
    -v, --version                    show version
$ ./bin/myecho --help
    -h, --help                       show help
    -v, --version                    show version

ヘルプが表示されました。しかし、もう少し体裁の整ったヘルプがよいですね。例えば、コマンドの説明や Usage などがあると良さそうです。テストを書きましょう。

spec/myecho_spec.cr の一部
describe "writes the help to specified IO" do
  it "with '-h'" do
    io = IO::Memory.new
    myecho = MyEcho::Cli.new(io)
    myecho.run(["-h"])
    io.to_s.should eq <<-HELP_MESSAGE

    My echo.

    Usage: myecho [options] [arguments]

        -h, --help                       show help
        -v, --version                    show version

    HELP_MESSAGE
  end
end

良い感じのヘルプにしてみました。テストが通るように実装しましょう。OptionParser には、 #banner= というメソッドがあり、ヘルプメッセージに加える文字列を定義できます。

src/myecho.cr の一部
  parser.banner = <<-BANNER

  My echo.

  Usage: myecho [options] [arguments]

  BANNER

これでテストを通すことができました。build して動作を確かめましょう。

$ crystal build -o ./bin/myecho ./src/cli.cr
$ ./bin/myecho --help

My echo.

Usage: myecho [options] [arguments]

    -h, --help                       show help
    -v, --version                    show version

より、ヘルプらしくなりました。OptionParser を使えば、このように簡単にヘルプを設定できます。

prefix を付ける --prefix を実装する

もっと CLI ツールらしくするために、さらにオプションを加えましょう。各コマンド引数に prefix をつける --prefix オプションです。期待される動作は次のようになります。

$ ./bin/myecho --prefix pre_ foo bar baz
pre_foo pre_bar pre_baz

--prefix PREFIX を指定することで、各引数の先頭に PREFIX を付けます。まずはテストから書きましょう。

spec/myecho_spec.cr の一部
describe "prefix specified string to each arguments" do
  it "with '--prefix PREFIX'" do
    io = IO::Memory.new
    myecho = MyEcho::Cli.new(io)
    myecho.run(["--prefix", "pre_", "foo", "bar", "baz"])
    io.to_s.should eq "pre_foo pre_bar pre_baz\n"
  end
end

このテストを通すように実装しましょう。

src/myecho.cr の一部
  # OptionParserを用いたオプションの設定
  OptionParser.parse(args) do |parser|

    ...

    parser.on("--prefix PREFIX", "prefix to each arguments") do |prefix|
      options.prefix = prefix
    end

    ...

  end

  ...

  prefix = options.prefix
  unless prefix.nil?
    @io.print options.args.map { |arg| prefix + arg }.join(" ") + "\n"
    return
  end

OptionParser#on は、 long_flag の名前だけでも指定可能です。--prefix PREFIX のように、オプション引数( PREFIX )を書くと、オプション引数が必須になります。また、今回の --prefix 定義のままで、コマンドラインから --prefix=PREFIX のように = を用いた指定も可能です。いい感じに取り扱ってくれます。

これで --prefix の実装も終わりました。build して動作を確認しましょう。

$ crystal build -o ./bin/myecho ./src/cli.cr
$ ./bin/myecho --prefix pre_ foo bar baz
pre_foo pre_bar pre_baz

うまく動作しているようです。

 

いかがでしたでしょうか。OptionParser を使っての CLI ツールの作成方法が大体つかめたでしょうか。

以下に、ここまでで紹介した myecho のコード全てを記載します。

src/cli.cr
require "./myecho"

MyEcho::Cli.new.run(ARGV)
src/myecho.cr
require "./myecho/*"
require "option_parser"

module MyEcho
  class Cli
    def initialize(@io : IO = STDOUT)
    end

    class Options
      property display_version : Bool = false
      property args : Array(String) = [] of String
      property display_help : Bool = false
      property help_message : String = ""
      property prefix : String? = nil
    end

    def run(args)
      # オプション設定を格納する
      options = Options.new

      # OptionParserを用いたオプションの設定
      OptionParser.parse(args) do |parser|
        parser.banner = <<-BANNER

        My echo.

        Usage: myecho [options] [arguments]

        BANNER
        parser.on("--prefix PREFIX", "prefix to each arguments") do |prefix|
          options.prefix = prefix
        end
        parser.on("-h", "--help", "show help") do
          options.display_help = true
        end
        parser.on("-v", "--version", "show version") do
          options.display_version = true
        end
        parser.unknown_args do |unknown_args|
          options.args = unknown_args
        end
        # ヘルプメッセージの格納
        options.help_message = parser.to_s + "\n"
      end

      # ヘルプの表示
      if options.display_help
        @io.print options.help_message
        return
      end

      # バージョンの表示
      if options.display_version
        @io.print MyEcho::VERSION + "\n"
        return
      end

      # prefixをつける
      prefix = options.prefix
      unless prefix.nil?
        @io.print options.args.map { |arg| prefix + arg }.join(" ") + "\n"
        return
      end

      # 引数の表示
      @io.print options.args.join(" ") + "\n"
    end
  end
end
src/myecho_spec.cr
require "./spec_helper"
require "./../src/myecho.cr"

describe MyEcho do
  describe MyEcho::Cli do
    describe "run" do
      it "writes the content of args to specified IO with args" do
        io = IO::Memory.new
        myecho = MyEcho::Cli.new(io)
        myecho.run(["foo", "bar"])
        io.to_s.should eq "foo bar\n"
      end
      describe "writes the version to specified IO" do
        it "with '-v'" do
          io = IO::Memory.new
          myecho = MyEcho::Cli.new(io)
          myecho.run(["-v"])
          io.to_s.should eq MyEcho::VERSION + "\n"
        end
        it "with '--version'" do
          io = IO::Memory.new
          myecho = MyEcho::Cli.new(io)
          myecho.run(["--version"]) (1)
          io.to_s.should eq MyEcho::VERSION + "\n"
        end
      end
      describe "writes the help to specified IO" do
        it "with '-h'" do
          io = IO::Memory.new
          myecho = MyEcho::Cli.new(io)
          myecho.run(["-h"])
          io.to_s.should eq <<-HELP_MESSAGE

          My echo.

          Usage: myecho [options] [arguments]

              --prefix PREFIX                  prefix to each arguments
              -h, --help                       show help
              -v, --version                    show version

          HELP_MESSAGE
        end
      end
      describe "prefix specified string to each arguments" do
        it "with '--prefix PREFIX'" do
          io = IO::Memory.new
          myecho = MyEcho::Cli.new(io)
          myecho.run(["--prefix", "pre_", "foo", "bar", "baz"])
          io.to_s.should eq "pre_foo pre_bar pre_baz\n"
        end
      end
    end
  end
end

次は、もう少しかゆいところに手が届く、サードパーティ製の CLI ビルダーライブラリをいくつかご紹介します。

サードパーティ製のライブラリを使う

CLI ツールを作成するにあたって、サードパーティ製の CLI ビルダーツールを使うことは得策です。OptionParser よりもリッチな機能を使うことができます。例えば、 Ruby だと thor などが有名です。Crystal でも CLI ビルダーツールが作成されています。今回は主観で選択したいくつかをご紹介します。題材としては、ここまで作ってきた myecho を用います。

mrrooijen/commander

早い時期から作成されていたライブラリです。百聞は一見に如かず、早速 myecho を実装しましょう。

src/myecho_commander.cr
require "./myecho_commander/*"
require "commander"

cli = Commander::Command.new do |cmd|
  cmd.use = "myecho"
  cmd.long = "My echo."

  cmd.flags.add do |flag|
    flag.name = "prefix"
    flag.long = "--prefix"
    flag.default = ""
    flag.description = "prefix to each arguments."
  end

  cmd.flags.add do |flag|
    flag.name = "version"
    flag.long = "--version"
    flag.short = "-v"
    flag.default = false
    flag.description = "show version."
  end

  cmd.run do |options, arguments|
    # バージョンの表示
    if options.bool["version"]
      puts MyechoCommander::VERSION
      next
    end

    # prefixをつける
    prefix = options.string["prefix"]
    unless prefix.empty?
      puts arguments.map { |arg| prefix + arg }.join(" ")
      next
    end

    # 引数の表示
    puts arguments.join(" ")
  end
end

Commander.run(cli, ARGV)

サードパーティ製のライブラリは、基本的に次の構成になっています。

  • コマンドの説明( DescriptionUsage など)

  • OptionsFlags の定義

  • 実際に実行される箇所

    • run メソッドや run ブロックなど

    • ここで OptionsFlags の入力値を受け取れる

    • ここで 入力された引数を受け取れる

これらを独自の定義方法で書いていきます。OotionParser を用いたときよりも見やすくなっていると思います。また、 helpversion など、 CLI ツールに必須のオプションはデフォルトでついている場合もあります。mrrooijen/commander の場合は help がデフォルトで設定されているので、コード上には現れていません。また、サブコマンドも実装可能です。詳しくは公式マニュアルを御覧ください。コードを実際に実行すると次のようになります。

$ crystal run src/myecho_commander.cr -- foo bar baz
foo bar baz
$ crystal run src/myecho_commander.cr -- --version
0.1.0
$ crystal run src/myecho_commander.cr -- --help
  myecho - My echo.

  Usage:
    myecho [flags] [arguments]

  Commands:
    help [command]  # Help about any command.

  Flags:
    -h, --help     # Help for this command. default: 'false'.
        --prefix   # prefix to each arguments. default: ''.
    -v, --version  # show version. default: 'false'.
$ crystal run src/myecho_commander.cr -- --prefix pre_ foo bar baz
pre_foo pre_bar pre_baz

期待通りの動作をしていることがわかります。

jwaldrip/admiral.cr

最近も開発されているライブラリです。早速コードを見てみましょう。

src/myecho_admiral.cr
require "./myecho_admiral/*"
require "admiral"

module MyechoAdmiral
  class Cli < Admiral::Command
    define_version MyechoAdmiral::VERSION, short: v
    define_help description: "My echo.", short: h

    define_flag prefix : String?,
      description: "prefix to each arguments.",
      long: prefix

    def run
      # prefixをつける
      prefix = flags.prefix
      unless prefix.nil?
        puts arguments.map { |arg| prefix + arg }.join(" ")
        return
      end

      # 引数の表示
      puts arguments.join(" ")
    end
  end
end

MyechoAdmiral::Cli.run

行数が少ないですね。helpversion はマクロで1行で書かれています。こういった DSL を提供しやすいのもマクロの強みです。構造もわかりやすく、読みやすいと思います。もちろん、サブコマンドも対応しています。

実際に実行すると次のようになります。

$ crystal run src/myecho_admiral.cr -- foo bar baz
foo bar baz
$ crystal run src/myecho_admiral.cr -- --version
0.1.0
$ crystal run src/myecho_admiral.cr -- --help
Usage:
  myecho [flags...] [arg...]

My echo.

Flags:
  --help, -h (default: false)     # Displays help for the current command.
  --prefix                        # prefix to each arguments.
  --version, -v (default: false)
$ crystal run src/myecho_admiral.cr -- --prefix pre_ foo bar baz
pre_foo pre_bar pre_baz

こちらも期待通りの動作をしています。

at-grandpa/clim

これは私自身が作成したライブラリです。記述量の少なさと直感的な記述を目的に作成しています。コードを見てみましょう。

src/myecho_clim.cr
require "./myecho_clim/*"
require "clim"

module MyechoClim
  class Cli < Clim
    main_command do
      desc "My echo."
      usage "myecho [options] [arguments] ..."
      option "--prefix PREFIX", type: String, desc: "prefix to each arguments.", default: ""
      version MyechoClim::VERSION, short: "-v"
      run do |options, arguments|
        # prefixをつける
        prefix = options.prefix
        unless prefix.empty?
          puts arguments.map { |argument| prefix + argument }.join(" ")
          return
        end

        # 引数の表示
        puts arguments.join(" ")
      end
    end
  end
end

MyechoClim::Cli.start(ARGV)

descoption などの定義が1行で書けます。version マクロも用意しました。コマンドの実行箇所は、 run ブロックになります。サブコマンドも対応しており、直感的に記述することができます。詳しくはマニュアルを御覧ください。

実際に実行すると次のようになります。

$ crystal run src/myecho_clim.cr -- foo bar baz
foo bar baz
$ crystal run src/myecho_clim.cr -- --version
0.1.0
$ crystal run src/myecho_clim.cr -- --help

  My echo.

  Usage:

    myecho [options] [arguments] ...

  Options:

    --prefix PREFIX                  prefix to each arguments. [type:String] [default:""]
    --help                           Show this help.
    -v, --version                    Show version.

$ crystal run src/myecho_clim.cr -- --prefix pre_ foo bar baz
pre_foo pre_bar pre_baz

こちらも期待通りの動作をしています。

 

サードパーティ製のライブラリはそれぞれに特徴がありますが、デフォルトの OptionParser よりはリッチな機能を提供してくれます。個人で使う小さな CLI ツールだと OptionParser で十分かもしれません。しかし、ツールとして公開したりメンテナンスが必要になってくるケースでは、サードパーティ製ライブラリを使うほうが良いかと思います。ぜひ一度試してみてください。

まとめ

この章では Crystal で CLI ツールの開発を行うことについて説明しました。冒頭に説明した通り、利点は次のようになるでしょう。

  • コンパイルしてワンバイナリにできる

  • Ruby 風の syntax で雑に書ける

  • 実行速度が早い

  • コンパイル時に型チェックが入る

ものすごく雑に小さい CLI ツールを作成する場合は、コンパイルがある分、 Crystal よりも Ruby の方が速いでしょう。しかし、中規模程度でコード量が多くてメンテナンスが必要になってくるケースだと、 Crystal の利点は大きくなってくるのではないでしょうか。大規模なバッチ処理などでも、処理スピードやメモリ使用量などで Crysal の力が発揮されると思います。

みなさんも一度、 敷居の低い CLI ツールを通して Crystal に触れてみてください。